自分が一番好きと思える自分でいたい。だから「女性らしさ」を手に入れる
ダイエットにはまった一人の女性を通じて、女性が抱えるダイエットの本質とは何かを伝えるシリーズ。
今回取材をしたダイエットにはまったサヤカさん(28)は、孤独と戦いながら「痩せる」ことに成功したものの、手に入れたものはどこか物足りなく感じる自分。
「本当に欲しかったものは痩せている自分ではなかったのかも」。そう気づいた彼女が本当に手に入れたいものとは。
人生で一番のどん底だった気がする
スマホに入っている昔の写真を眺めながらサヤカさん(28)は語り始めました。
――当時25歳、彼氏もいなくて、女友達と遊んでいることが多かったです。
ある日、友達との約束に間に合いそうなかったので、タクシーに乗ったんです。その日は細身のパンツを履いていました。女性同士とはいっても、おしゃれに気を遣いたい年頃でしたからね。苦しいながらも無理やりウェストのボタンをしめて、何とか履いている状態でしたね。
急いでいたこともあって、勢いよくタクシーの後部座席に乗り込んだ瞬間「ベリッ!」と嫌な音が……。窮屈なパンツを無理やり履いていたせいで、太もも内側の生地が裂けてしまったんです。
もちろん友達との予定もキャンセルして、何だか情けなくてその日はずっと泣いていたのを覚えています。痩せたい気持ちはあってダイエットに取り組んだこともありますが、スイーツとか甘いものが大好きでダイエットを一念発起しても続かなかったのが正直なところです……。
でも流石にですね、年頃の女性のパンツが裂けてしまうなんて一大事じゃないですか。このまま行くと彼氏も出来なくて、一人寂しく過ごす自分が浮かんでしまって、世の中真っ暗みたいな……。
それで、ダイエットを本気でやってみようかなって思うようになりました。
「今度こそ痩せてみせる」と強い決意をしたサヤカさん。彼女実際がとった行動とは?
痩せることしか考えていなかった
――夏が近づいてくると、痩せたいなっていう方増えるじゃないですか。でも社会人になると、同世代の友達には彼氏がいたりして、プールとか海にも誘われなくなりましたし、自分からも声がかけづらくなりました。
そもそもそんなにスタイルがいい方でないから、夏でも肌の露出は控えめだし、夏が来るから痩せようとか思いませんでしたけど……(苦笑)。
だから暑い夏の日は、カフェで涼しげな顔でインスタ映えするスイーツを楽しんだりしていましたね。そうやってダイエットとは無縁の生活をしていた結果が、タクシーの一件につながっていうわけです(笑)。
そんな生活をしていたわけですけど、流石に太りすぎ!?と思って、今度こそ痩せてみせると決意したわけです。どんなふうになりたいとか、どれくらい痩せればよいとか何も考えずに、ひたすら痩せることだけが目的でした。
でも妄想は膨らんで、ちょっと素敵な男性に後ろから声をかけられて、ドキッみたいな(笑)。そんなことが起こったらいいなって。
ダイエット未経験な訳ではないので、カロリー制限とか糖質制限くらいの知識はありました。徹底してやりましたね。スポーツジムにも通いました。
その成果もあって、半年程度で-6kgのダイエットに成功しました!やればできる自分を褒めたいなぁと思うのもつかの間、(ダイエット経験者なら分かるかと思いますが)何かを制限して成り立つダイエットって元に戻るのもあっという間って知ってました?
結構、私にしては苦労して痩せることができたと思ったのに、気を緩めてしまったばかりに簡単にリバウンド……。どこにでもあるような話かもしれませんが、ただ痩せたいだけなのに、それさえ許されない私って何だろうって。
普通の女としての「枠」に入りたい気持ちがエスカレートしていきました。
鏡の中の自分が好きになれない
――その頃からですかね。痩せない自分が許せなくなって、食事が喉を通らなくなったんです。いわゆる「拒食症」というのになってしまって……。
「痩せて綺麗になりたい」という容姿への強いこだわりが強すぎて、今の自分は周囲の人に陰で笑われているんじゃないかって思うようになったんです。
もともと生真面目な性格で、社会人になって親元を離れて一人暮らしをしていたことで、拒食症を止める人も、心配してくれる人もいなかった環境もあったかと思います。
すっかり精神的にも病んでしまった私は、これまでとは打って変わって食事を摂らなくなり、食べても吐くを繰り返して体重を落としていきました。さすがにここまでくると病的ということもあって、ダイエットを決意した頃から比べると15kgくらい痩せました。
当然、タクシー事件で破れてしまったパンツも楽々と履けるくらいになったのですが……。
この頃には拒食症でホルモンバランスは崩れて、月経は止まるし、貧血は起こるし、体調に症状が現れてしまって、とうとう職場で倒れてしまって病院に運ばれました。意識がないなか、病院に運ばれてしまったので、目が覚めたときに初めて病院にいるって分かったときは動揺したのを覚えています。
少し落ち着いてからお手洗いに行く時、部屋にあった鏡に映っている自分を久しぶりに見て愕然!そこに写っているのはかつての自分ではなく、やせ細ったガリガリのカラダ。
こんなの「私じゃない……」。
痩せたい一心で頑張ってきたダイエット。それが行き過ぎて拒食症になってしまった結果、目の前に映る自分は痩せているけど、どこか物足りない、魅力がない姿。
でも、そんながっかりな自分を見て、私は何やっているんだろうなぁ。馬鹿だなぁって思いながら、鏡に映る細い肉体を眺めると、何故かクスッと笑えたんです。
女性らしさを手に入れたい
――こんなことがあったけど、実はこれからもダイエットを続けたいなって思っています。ただ、あの時のような過度な食事制限じゃなくて、健康的で女性らしい見た目を意識して、自分らしさと健康維持のために。今では少しくらいぽっちゃりでもいいのかなって思っています。
自分のスタイルに自信があるわけではないけど、女性が輝くときって恋愛でも仕事でも楽しんでいる時だと思うんです。自分らしさを見失ってしまっては、誰も自分の良さに気づいてくれない可能性だってあるわけですし。そんなのは耐えられない。
太っている自分にストレスを抱えて自分を嫌いになるより、今の自分を好きになることの方が大事だなって気づいたんです。
タクシーの一件から拒食症になるまで大変でしたけど、今では大事なことに気づかせてくれた、私にとって必要な経験だったと思います。
【取材後記】
過度なダイエットで痩せることをやめ、自分らしく、女性らしく生きることを選んだサヤカさん。「鏡の中に映る自分が好きになれない、女性らしさを手に入れたい」と話す一方で、一般的な女性の定義を他人視点から自分視点へと「枠」や「軸」を変えていくことで輝き方を見つけたと語ったことが印象的でした。
そんなサヤカさんと触れ合う人たちは、彼女をどのように見ているのでしょうか。きっと彼女の力強さと美しさ憧憬を感じ取っているかもしれませんね。
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